『お帰りください』
母の言葉を聞き絶望した私は、
実家を後にし、マメさんと共にトボトボ駅までの道を歩いていました。
心の中で、スーッと冷めていくものを感じました。
もう母に対して何の感情も湧いてこないのに、
なぜか涙が出てきました。
マメさんはただただ、私の手を強く握っていてくれました。
大通りに差し掛かった時、向こう側から白い車が走ってきて、
私たちの前で停まりました。
『乗りなさい❗️駅まで送っていくから❗️』
私の母でした。
暗い顔を誰にも見られたくなかったので、
私たちはそこまで、大通りからは見えない裏道を歩いていました。
母の車が実家と反対側から来たということは、
きっとずいぶん探したのでしょう。
私は断る気力もなく、母の車に乗り込みました。
駅までの10分ほどの道のりで、母とは少し言葉を交わしましたが、
建設的な話にはなりませんでした。
お互いに歩み寄れる余地がないことを、
再び実感しました。
母からの罵倒に近い言葉を浴びながら、
私たちは送ってもらったことに対するお礼だけを伝え、
母と別れました。
これが、今生の別れだなと、感じていました。
何も感じないように、必死で心を閉ざそうとしていました。
新幹線の駅に向かう電車の中で、
私は母に対して抱いていた感情を、
全て頭の奥底にしまい込み、鍵をかけました。
勝手に涙が流れていましたが、気が付かないふりをしました。
新幹線の駅でマメさんと2人で美味しいものを食べ、
いつも実家に帰ると買っていくお気に入りのお菓子を買って、
帰路につきました。
『付き合ってくれてありがとう。あんまり来た意味がなかったね。ごめんね。』
マメさんに言うと、
『ううん、意味はあったよ。来てよかった。
俺が付いてるから、大丈夫だよ。』
と言ってくれました。
この、帰りの新幹線の中で、またしても母からの追い撃ちが待っていました。