続・研修医純情物語⑤~天性の才能~ | 夫婦2人暮らし マメカナののんびりHappy Life♪
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研修医純情物語①、②、③、④
こちらの記事は
続・研修医純情物語①〜華奈の暗黒時代〜
続・研修医純情物語②〜負の連鎖〜
続・研修医純情物語③~戦場のオアシス~
続・研修医純情物語④~10年後に想いを馳せる~
の続きです🌷
私の過去の話が続いているので、みなさん飽きてきちゃったでしょうか⁉️
このシリーズも、そろそろ終わりにしようかな☺️
先日の記事で、私が口腔外科を辞めて普通の歯医者さんになろうと思った大きなきっかけがあったと書きました。
今日は、そのきっかけのお話をしようと思います🥰
私が研修医修了後に勤めた病院には、そこに行き着くきっかけとなった素晴らしい部長の他にもう1人、とても尊敬していた副部長、S先生がいました。
S先生は30代半ばでありながら地域の中核病院の副部長で、知識も技術もトップクラスの方でした。
直近の先輩からは入社した当初に「有名な病院で働いていたからって調子に乗るなよ」というようなネガティブな対応をされていましたが、S先生は非常にさっぱりとした性格の方で、良いものは良い、悪いものは悪い、有名な病院で働いていたならそこで見てきたことを僕にも教えてくれと目下の私におっしゃるくらい、理不尽な対応が全くない方でした。
もちろん未熟な部分に対しては厳しいことも言われましたけどね😂
非常に勉強家であるだけでなく、手術がものすごく上手くてスピードも早く、私はS先生の手術を覗き見てはその技術を真似していました。
S先生の年齢ではあまり任されないような難しい手術も手掛けていらっしゃって、私から見てモンスターだと思うくらいに凄い方でした。
正に、天才とはこの方のことだと感じていました。
しかも、S先生は天性の才能があるだけではなく、努力家でもありました。
ちょっとした空き時間に手術に役立つようなことを練習したり、症例をデータにまとめて学会で発表したり、論文を書いたり、そういったことをさらっと進めていました。
そして、他の先生方と大きく異なったのは、どんなに面倒な仕事が回ってきても、フットワークがとても軽く、愚痴ひとつこぼさず、全く嫌だと思っていない様子だったことでした。
私がS先生がいかに遠い先にいらっしゃる方なのかを思い知る出来事がありました。
私がファーストコール(急患や急変があったときに呼び出される当番)だったある日、午前の病棟回診を終えて自宅でご飯を食べていると、ピッチが鳴りました。
「初療室(救急車を受け入れる場所)の◯◯です。ドクターヘリから受け入れ要請がありました。高所からの転落の方で、顔面の多発骨折です。意識レベル300(意識がなく、刺激にも全く反応しない状態)、オペ室は空いています。受けられますか?」
どんな内容であっても、入院病棟とオペ室が空いていれば、答えはYesです。
食べかけのごはんを放置して急いで病院に向かいながら、今日のセカンドコール(ファーストコールのドクターで対処しきれなかった場合に呼び出す当番の上級医)は誰だったっけ、と思い浮かべていました。
その日のセカンドコールは、私より3年上の先輩でした。
瞬時に考えました。
さっきの電話の感じだと、ほぼ確実に緊急オペになりそうだ。
顔面の多発骨折となると、今日のセカンドコールの先生と私だけではオペはできない。
通常はまずセカンドコールの先生を呼ぶのがルールだけれど、ここはS先生を呼ぼう!
「S先生、お休みのところすみません。高所からの転落で多発骨折の方がこれから運ばれてきます。まだ私も直接は診ていないのですが、ほぼ確実に緊急オペになりそうです。当番じゃない日に申し訳ないのですが、来ていただくことはできませんか?」
「いいよー!すぐ向かうわ」
S先生はいつもの軽いフットワークですぐに駆けつけてくださり、無事に緊急オペを終えることができました。
緊急オペの後、医局でしばしの休憩をしている時にS先生にずっと気になっていたことを聞きました。
「今日は当番じゃない日にありがとうございました。先生は、ずっとこの仕事をされていて、いつでも呼び出されてプライベートが確保できないことは苦痛じゃないんですか?」
S先生は言いました。
「全然!僕は緊急オペでも何でも、いつでも大歓迎!それが好きでやってるから✨」
その答えを聞いた時、思ったんです。
「私はこの仕事には向いてなかったんだ」
私は、苦痛に感じていたんです。
夜中の3時に呼び出されて駆けつけてみたら、前日の朝に転んで顎が折れてしまった方だった時。
「日中にすぐ来てくれたら人手も多くて対応しやすかったし、私も今日寝れていたのに」
「何でわざわざ夜中になってから来るんだろう」
ファーストコールの当番の日は、いつも願っていました。
「今日はこの地域で大きな事故がありませんように」
「入院患者さんが安定していますように」
私は勝手に、みんなそう感じるのだと勘違いしていました。
でも、S先生は全く違いました。
その時に、私の中でいろいろなことに諦めがつきました。
S先生はそれまでも、私が何年経験を積んでも超えられない高い高い壁に感じていました。
それがなぜなのか、納得がいきました。
そりゃ、超えられないよ。
この方は天才だ。
でも、それだけじゃなかった。
S先生はこの仕事が大好きで、才能もあって、努力も人一倍されている。
大好きなことを仕事にするのって、最強だ。
喜んでプライベートを投げ出せない私は、この場所にいるべきじゃない。
私は私にもっと合った居場所を見つけていくべきなんじゃないか。
そう、思い知りました。
こうして、4年間の怒涛の口腔外科生活を経て、私は普通の街の歯医者さんになりましたとさ🥰
実際には街の歯医者さんも決して簡単なものではなく、現在に辿り着くまで本当にいろいろなことに揉まれたんですけどね😅
そのお話は、需要があれば…もし読みたい方がいらっしゃったら書こうかなと思います🌸
長々と書いてしまいましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました!
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