研修医純情物語② | 夫婦2人暮らし マメカナののんびりHappy Life♪

こんにちは!

読んでいただいてありがとうございます😊

初めての方はこちらからお願いします♪      

こちらのシリーズは、華奈個人の約8年前の思い出話です🌷

みなさん、「研修医」と聞くとどのようなイメージをお持ちでしょうか?

もちろん未熟だということは言うまでもありませんが、「そうは言っても6年も大学で勉強して、病院実習もあるんでしょ?ある程度のことはわかるんじゃないの?」と思われているでしょうか?

実は、もちろん個人差や科によっての差はありますが、研修が始まったばかりの春の段階では、研修医は本当にわからないことだらけで何もできません。

それくらいに、教科書上での勉強や病院実習と、現実に患者さんを診るということには違いがあります。

人の身体はその形も機能も、全く同じ処置を施された場合のその後の経過も、人によって本当に様々なのです。      

私が研修医として働き始めた時も例外ではなく、目の前に広がるのは未知の世界でした。

「こんなにいろいろなパターンの処置があるのか」

「こんなに人によって辛さは違うものなのか」

「同じ経過の人であっても、その背景によって最適な治療が変わってくるのか」

「こんなこと、大学では教わらなかった」

正直なところ、そんなことばかりでした。

前回の記事でも書きましたが、あまりにわからないことだらけで無力感がものすごく、私は研修を始めて約1ヶ月間は毎日毎日トイレで泣いていました。

同じ病院に同期のドクターがおらず、自分のその時の能力が不足しているのか、1年目としては妥当な程度なのか分からなかったということも、追い詰められた要因のひとつだったと思います。      

そんな分からないことだらけの毎日でも、他のドクターと同じように私に出来ることがひとつだけありました。

患者さんの話を聞くことでした。

まだ、どの患者さんの状態に注意しなければならないのかもわからない、自分に出来ることも限られている…それでも、話を聞くことだけはできました。

毎日、他の誰よりも早く病棟へ行き、ひとりひとりのお部屋に伺い、体調の変化を聞いたり口の中や傷を診せてもらったりということを続けました。

はじめは、何を聞けば良いのかも、何を診れば良いのかもわかりませんでしたが、段々と『わからないこと』がわかるようになり、上司からも積極的に指導してもらえるようになりました。

私の研修先の病院は癌の患者さんが非常に多かったので、長期間入院されている方が大半でした。

長期入院の方はすぐに私のことを覚えてくださり、徐々に治療に関することだけではなく、入院生活で辛いことや、ご家族のこと、退院したらこんなことをしたいという目標なども話してくださるようになりました。      

ある日、週一回ある部長回診で科のメンバー全員で病棟を回っていた時のこと…

私は器具が積んであるワゴンを運んだり、各病室で処置をする時に準備をしたりという役割だったのですが、ある患者さんの奥様に呼び止められました。

『先生❗️ちょっとだけ、こちらに来てもらえませんか?』

その方は進行癌の方で、何ヶ月も入院して治療を受けている方でした。

ご夫婦で飲食店をされていましたが、ご主人の入院中はお店を閉めざるを得ず、早く退院してお客さんに美味しいものを作りたいといつもおっしゃっていました。

その日は体調も良さそうだったのに、どうしたんだろう…不思議に思いながら、回診ワゴンを先輩にお願いしてその方の病室に戻りました。

すると、

『主人が先生にどうしてもこれを渡したいって言うんです』

そこには、両手で抱えるほどの大きな箱が置いてありました。

開けてみると、ケーキと可愛らしいテディベアが入っていました。

入院中でも状態が良い時は申請をすれば外出することができます。

その日の午前中に外出申請を出されていることは知っていたのですが、まさか私のために時間を使って出かけてくれたとは予想もしておらず本当にびっくりしました。

『長い入院で治療も辛かったけれど、先生がいつも励ましてくれたおかげて耐えられました。おかげさまでもうすぐ退院できます。本当にありがとうございます。』

私が歯科医師になってから初めて患者さんからいただいたプレゼントでした。

自分の無力さに絶望的になることも多かった研修医時代に、私個人に対して感謝していただいたということが、私にとって本当に大きな勇気となりました。

ただただ時間を割いて話を聞くというそれだけのことでも、何もできないままいるよりもずっと良かったんだと嬉しくなりました。      

歯科医師になって早8年が過ぎ、今では処置を効率よく進めることを優先して患者さんのお話を聞く時間が少ししか取れないことも増えました。

でも、時間が許す時には、出来る限り患者さんの言葉に耳を傾けて安心を与えられる歯科医師でありたいと、そう考えています。       

私に勇気と幸せをくださった患者さんは、その後残念ながら癌の再発で亡くなってしまいましたが、その優しい笑顔を私はいつまでも覚えています。


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